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横南高校物語 【学園物語】 ブログトップ

横南高校物語5 [横南高校物語 【学園物語】]

 放課後、千種光は、体育館脇の通用門で、七、八人の男子柔道部員に囲まれていた。喧嘩を吹っ掛けられていたのではない。・・・。入部の勧誘であった。
 光は、身長171センチメートル、体重65キロの細身であった。しかし、肩幅が広く、胸板が異常に厚かったため、体格は良く見えた。そこが、柔道部員の目にとまったのだった。
 
 「お前、良い体をしているよな」
部員の一人が言った。

 「いえ、それほどでも」

 「部活動は、なにをやるんだい」

 「まだ、決めていません」
そう、嘘をついた。光は、中学生時代から活躍してきた、野球部でなく映画研究部に入部することを心に決めていた。しかし、それをここで、この先輩柔道部員に悟られたくなかった。

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横南高校物語4 [横南高校物語 【学園物語】]

 亜紀子は、明日、瑶子に聞かせる曲を選んでいた。本棚には、今まで亜紀子が練習に練習を重ねた、
譜面を束ねたファイルが並んでいた。

 突然、携帯電話のメールボックスに、加藤晋太郎からのメールが入った。加藤は、整形外科医である。
昔、亜紀子の主治医であった男だ。

 亜紀子は、何度か右手の腱鞘炎を患ったことがあった。今は大丈夫であるが、ソフトボールの過酷なピッチング練習とピアノの練習が重なると、右手の手首を痛めていた。腱鞘炎の症状が出ると、亜紀子は通学途中にある、「みなみやま整形外科院」に通院していた。そこで、加藤は医員として勤務していた。

 加藤は、所謂インテリのエリートであったが、人当たりは良く、亜紀子は兄のように慕っていた。恋愛感情は無かったが、加藤に会うたび、胸は高鳴っていた。

 

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横南高校物語3 [横南高校物語 【学園物語】]

 瑶子は、週末までに終わらせねばならない、宿題に取り組んでいた。
でも、あまり捗っていなかった。理由は、薫子が知っていたことだ。そう、亜紀子がソフトボールをやめて、
音楽に打ち込むという事実を知っていたこと。それが、どうしても引っかかっていた。

 「どうして、薫子が知っていて」・・・頭から離れなかった。

 瑶子は、自分の携帯電話を取り出して、徐に電源を入れた。亜紀子からの連絡は、携帯電話にも、未だに無かった。

 瑶子は、登録している短文投稿サイト『モノローグ』を立上げ、ログインした。そして、書き込んだ。

 「親友に、裏切られた」

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横南高校物語2 [横南高校物語 【学園物語】]

 薫子の実家は、「ショパン」という小さな喫茶店を営んでいた。小さいといっても、この地域では、そこそこの規模の喫茶店だった。フロアは、1階と2階に分かれていた。1階には、カウンター席とテーブル席が20席ほどあった。2階には、直径3メートルの円盤1枚板ものの屋久杉を使ったテーブル席とソファ席が10席ほどあり、フロアの奥には、アップライトピアノが置かれていた。2階フロアでは、月に一回、地元の音楽教室主催の音楽会も開催されていた。瑶子と亜紀子は、この音楽会の常連客でもあった。

 瑶子は、薫子に電話を掛けた。

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横南高校物語1 [横南高校物語 【学園物語】]

 横浜南山高校(よこはまみなみやまこうこう・通称:よこなん高)は小高い丘の上に設立された男女共学の高校である。学校の運営は、神奈川県がおこなってる。つまり、県立高校である。1学年12クラス、3学年で36クラス。1クラス平均30名の生徒を抱えるマンモス高校の一つである。

 亜紀子は、男子バスケットボール部のマネージャーをしていた。彼女の夢は、音楽の先生になることだった。故に、音楽大学への進学は、亜紀子にとって重要なことだった。中学時代は、ソフトボール部でピッチャーを任されていた。「エースで4番」というわけにはいかなかったが、チームの中心選手であった。誰もが、高校でソフトボール部に入部し、インターハイを目指すと思っていた。しかし、亜紀子は、その道を選ばなかった。

 理由の一つは、「指」を守ることだった。ソフトボールへの未練が、無いわけではなかったが、現実主義の亜紀子にとっては、それが一番ベストな選択だった。

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